与えられたお題についてポエムを書くやつをやっていきます。
今回頂いたお題は「カマキリ、ウラジオストク、水晶」でした。
目指せなろう作家。
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2020年。ロシア極東、ウラジオストク。
国際情勢にも流行にも絡まないであろうこの都市で、史上最大の戦いが行われようとしていた。
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ウラジオストクの地は歴史上様々な民族により支配されてきた。ある時は女真族に。ある時は中国に。そして今はロシアに。
これらの国々には、得てして『山姥』の伝説が存在している。山姥は痩身の老婆のような見た目をしており、山奥に迷い込んだ人間を食らってしまうのだという。
もちろんこれは単なる伝説にすぎない。魔法や怪物が迷信として切り捨てられた21世紀において、こんな伝承を信じる方が馬鹿げているというものだ。
だが、火のないところに煙が立たないのもまた事実。この地には確かに"何か"がいるのだ。
今まさに、その"何か"が獲物を見つけて飛びかかろうとしていた。
月光に照らされ鈍く光る鎌。ギョロギョロと動く大きな目。まるで骨が剥き出しになっているのかと思うほどに細く、角ばった身体のライン。
詳しい人間が見れば、すぐに気づくことだろう。――本当に骨、いや、骨格が剥き出しになっている――外骨格なのだと。
この地に住む人々に古くから山姥として恐れられ、伝説の怪物と化していたものの正体は、体長5mはあろうかという巨大カマキリであった。
カマキリの狩りは至ってシンプルだ。擬態し、油断した相手をその鎌で捕え、強靭な顎で噛みちぎる。サイズが大きくなろうが基本は変わらない。夜闇に紛れ、敵の油断を誘い、そして捕える。その強靭な鎌で一度捕えられてしまうと、逃げられる生物は地球上には存在しない。
此度の狩りもいつもと変わらない。いつも通り油断しきった獲物を鎌で捕え、噛み砕く。それで終わる。
――はずだった。
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【巨大カマキリ スペック】
複眼: 天体望遠鏡並み。見落とすものは存在しない。
飛行能力: 極度に優れている。不眠不休でマッハ10で飛行可能。
パワー: 約1000000000kgw。成人男性の約40000000倍である。通常のカマキリの鎌は切断に特化していないが、このカマキリは鉄筋コンクリートのビル程度なら軽々と切断できる。
外骨格: 非常に頑健。ナパーム弾でももろともしない。
顎: カマキリ最強の武器。ダイヤモンドすら軽々と引きちぎる。
精神: 武士道を持ち合わせている。
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1908年6月30日。ロシア帝国ツングースカ川上流にて原因不明の大爆発が発生した。俗に言うツングースカ大爆発である。
ガス爆発や隕石の落下が原因ではないかと有力視されてはいるものの、真相は誰にもわからない。ましてや、爆発直後に爆心地から立ち去った一匹の生命体のことなんて、誰も知りはしないだろう。
珪素生物、と呼ばれる概念がある。炭素と珪素の類似性から、地球のような炭素を中心に構成される生物ではなく、珪素を中心に構成された生物も存在しているのではないかという概念であり、SF界を中心として話の種にされてきた。
今回の場合には、人間が想像可能なものは全て実現可能であるという言葉は正しかったようである。爆発は、珪素生命体が大気圏外から地球に落下してきたことによる衝撃で起きたものなのだから。
落下してきた珪素生物は、全身が水晶で構成されていた。大気圏外からの突入と着弾にすら耐えるその強靭な肉体。地球上の誰であろうと傷つけることはできないだろう。――ただ一匹を除いては。
彼(あるいは彼女)の目的は至極単純だ。世界の破滅である。彼はその強靭な肉体を持って今まで数千の星から生命体を消滅させてきた。星を破壊する過程で行われる強者との戦い、そしてその果てにある星の住人たちの絶望。岩に等しい寿命を持ち、あらゆることをやり尽くしてしまった彼にとってはそれが数少ない楽しみとなっていたのだ。
彼は失望していた。この星は文明レベルが低すぎる。着弾した際にあまりの文明レベルの低さに失望し、淡い期待を抱きながら100年を待った。彼にとっては100年など瞬きする時間にも満たない。だが、100年待っても核兵器程度の技術しか産まれず、あまつさえ自らの手で文明を滅ぼす日が近いであろう地球人に、これ以上付き合う必要はないと判断したのだ。
地球滅亡のために動き出そうとしたその日、彼は夜道で謎の生物に襲われた。攻撃を振りほどき、相対する――
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【水晶生命体 スペック】
視力: 存在しない。電磁波により全てを知覚する。
飛行能力: 跳躍のみで宇宙空間に到達可能。非常に高い。
パワー: 約1000000000kgw。成人男性の約40000000倍である。
肉体: 全身が非常に硬い鉱物で構成されている。ダイヤモンドを引きちぎるほどのパワーを持たない限り、傷付けることは不可能だろう。
精神: 武士道を持ち合わせている。
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――相対した瞬間、カマキリは理解した。これは単なる獲物ではないと。本能が、そう告げていたのだ。
今まで見てきた生命体は全て、獲物であった。周囲のボスとして君臨していたヒグマも、猟銃で武装した人間も、迷い込んできた子供も、皆等しく餌にすぎなかった。
この感情は、なんなのだろうか。まだ幼い頃に抱いた恐怖とも、獲物を刈り取った時の愉悦とも違う、この感情は。
好敵手と出会うことによる高揚感というものを、カマキリは初めて理解したのだった。
――相対した瞬間、水晶生命体は理解した。ここが自らの「終点」であると。本能が、そう告げていたのだ。
今まで見てきた生命体は全て、格下であった。恐ろしい科学力を備えた星も、太古の竜たちによって支配されていた星も、皆等しく滅ぼしてきた。
この感情を知っている。長らく抱いていなかった、この感情を。
戦えばどちらもただでは済まない。好敵手との出会いによる高揚感と、自らの終わりを感じながら、水晶生命体はない顔で笑っていた。
かくして、二匹の獣は出会った。どちらが勝ち、どちらが負けようとも、これが宇宙史上に残る最大の決戦であることには間違いがないだろう。
両者は向かい合って互いに飛びかかり、そして――
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・あとがき
B級パニックアクションみたいなのが書きたかったんだけど、難しかった。セリフとかを考えるのがもっと難しいのでこれでも書きやすい方だったんだけど、本当に先が思いやられるなあ。