やり貝日記

多分ゲームのこととかを書きます。

ステータス、オープニング!

 

今回頂いたお題は転生・冒険者・ステータスです。

目指すぜなろう作家。 

 

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異世界に転生するにあたって、貴方の望みを一つだけ叶えたいと思います!規則ですので!」

 

 目の前で女神を名乗る存在が何かしらの説明をしているような気がするが、放心状態の自分の耳には入ってこなかった。

 

 死後の世界も、異世界も、本当にあったのだ。

 

 何が功を奏したのかはわからない。たまたまトラックに轢かれそうになっていた幼女と猫を助けたことのポイントが高かったのかも。そんなことは関係なく、実は死んだら人類皆転生ができるのかもしれない。

 

 まあそんなことはどうでもよいのだ。大事なのは、自分があのつまらない世界からおさらばして、これから楽しい異世界へと転生できるということ。血沸き肉躍るような冒険を繰り広げるもよし。のんびりスローライフを過ごすもよし。わくわくが止まらなかった。

 

「……ちょっと聞いてますか?一つだけあなたの願いを叶えるって言ってるんですよ?早く答えてくれないと、こちらで決めてしまいますよ!女神も暇ではないので!」

 

「ああ、すみません。えーっとですね……」

 

 普段使わない頭をフル回転して考える。

 

 時間停止や女にモテやすくなるみたいなチート能力を貰うのはどうだろう。一瞬そんな考えが頭をよぎったが、すぐに冷静になる。いや、ダメだ。自分は単なる帰宅部の高校生。異世界の重力が小さいみたいなご都合パターンがない限り、チート能力を貰っても基礎能力が低すぎて扱いきれないだろう。

 

 ただ、肉体が強すぎるというのもどうなんだろう。少し腕を振っただけで地形を変えてしまうほどに強くなってしまうとそれはそれで困る。自分は別に魔王になりたいわけではないのだ。

 

 ああ、早く答えを出さなければ。もう、これしかないか……?

 

「HPを、体力を増やしてほしいです!!!」

 

 咄嗟に答えてしまったのが、これだった。体力が多ければまず死ぬことはないだろうし、ゴリ押しで強い敵にも勝てるだろう。即死魔法みたいなものもあるかもしれないが、大体のゲームでは耐性装備を付ければなんとかなるし、異世界でもなんとかなるだろう。防御力を増やすのも考えたが、防御無視攻撃が怖かった。

 

 後になって思うと、この選択が最大のミスだった。死にたい時に死ねる不老不死になりたいとか、もっと願いようがあったはずなのだ。

 

「なるほど。HPを増やしたいんですね。どれくらい増やしたいとかっていうのはありますか?」

 

「? どれくらい、と言うと?」

 

「貴方がこれから転生する異世界にはですね、『状態公開(ステータスオープン)』と呼ばれる魔法があるんです。対象の体力、攻撃力、防御力、魔力、素早さを数値として表示してくれるっていうとっても便利な魔法なんですよ。」

 

 女神が説明口調でまくし立ててくる。きっとこの人は今まで何度も自分みたいな人間の応対をやっていて、この会話にも何の感慨も抱いてないんだろうなあと考えると、少し悲しくなった。

 

「ちなみに冒険者平均のステータス数値はどれも20ですね。それを踏まえて、体力をどれくらいにしたいですか?」

 

「あっ、無限とかいうのはやめてくださいね。実は神々も有限の存在だったりするので、無限は扱えないんですよ。」

 

 再び頭をフル回転させ考える。

 

 まず頭に浮かんだのは1兆だった。大きい数字を答えろと言われたら1兆が出てくる人が多いのではないだろうか。だが一般冒険者の5000億倍と考えると心許ないような気もしてくる。

 

 敵の攻撃力がわからない。こちらの世界でいう核ミサイル級の攻撃を連発してくるような敵が平気でいる世界なら、HPはいくらあっても低すぎるということはないのだ。

 

 要は、自分が思いつける数字の中で一番でかいのを言ってしまえばいいのだろう。9999劾?いや、無量大数とかいう単位もあったっけ。

 

 ……ちょっと待てよ?ちゃんと聞いてなかったが、数学の教師が巨大数とかいうのを話していた気がするな。グラタンだとかベーコンだとか。えーっと確か……

 

「……グラハム数?」

 

 その言葉を聞いて女神は少しぽかんとしていたが、すぐに元の表情に戻ってこう答えた。

「あー。あれですね。大丈夫ですよ。体力をグラハム数にしておきます。」

 

 お、通った。少しは学校の授業も役に立つんだな。三角関数とかいうよくわからないものよりもこういうことを教えるべきなんだよな。

 

「じゃあ早速、貴方を異世界に飛ばしますよ?準備はいいですね?」

 

「大丈夫です」

 

「じゃあ行きますよ?……それっ!『ワープ』!」

 

 こうして俺の輝かしい異世界ライフがスタートしたのだった。

 

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冒険者ギルド~

 

「……はい。これで手続きはほとんど完了となります。最後に、あなたのステータスを計測しますね。」

 

 女神に異世界に飛ばされてから、俺はほぼ苦労することなくかなりの規模の城塞都市にある冒険者ギルドまで辿り着いた。

 都市の門番には道中で倒したモンスターの素材から得た金を渡して黙らせ、転生の標準権能として貰っていた異世界語理解の能力を活かせばなんということはなかったのだ。

 

 今まさに、自分は冒険者ギルドで冒険者になるための手続きを受けている。この世界の冒険者は過去の身分や経歴を気にするような職ではないらしく助かった。

 

「ああ、『状態公開(ステータスオープン)』を頼むよ。」

 

「お詳しいんですね。では、その水晶玉に手をかざしてください。」

 

 実は異世界に来てからというもの、ステータスオープンをやる日を待ちわびていた。自分の体力を見て、周囲の人間はどんな顔をするだろうか。たちまち最強の存在として尊敬を一身に集めてしまうかもしれない。目の前にいるギルド職員だって、一瞬で自分に惚れるかもしれない。なかなかに可愛いから、妾くらいにはしてやってもいいかもしれないな。期待に胸が高鳴って仕方ない。

 

「ではいくぞ…… 『状態公開(ステータスオープン)』!」

 結論から言うと、自分のステータスが完全にオープンすることは、なかった。

 

ーーーステータスーーー

氏名: 逆月 次郎

年齢: 17

種族: 人間

性別: 男

体力: 1397793656252768130955989664670312461686718571462884461321861049312456679222241983678671003662489017439835283674946217414580710986093744681881577263048178189150997649842013522644585060240111087266566835643525977414357754081782976299105975609586251654324639165155173137924456506026236831398222252954009458905476725063387443973650085826188650570877036638970957580690366997165460754924478930490876612356624610054670909430551097717419341948895226663183500526686215539291407698458571026178669850526136362024220315053839298125149693450306601984377976979527402990910744450979039643817831214420475535459613735702602150119234743941543587333344890010200212511582917227901199701341717144858784569098123390053542840187668637984687058119977622221108722650066566712842664155053056944989663539716908959736711362458744066188845501047960116931140440266342789256550350895083950391868235812062851884092204074431009039771971261740926944381013503076164007852617213788582556880969834386777589162005426383410800897453845310315437598865939157689801078811146251718312812119401470390603218607770734315247659207023054094184871235428247339773059029884913648155621392507891731810852085550153085803891519846134669351069133482326596202385965886115364376777848609305945362046149709656097514951403679174887181706321719797944104542334350205961493070408558512710773701445895160311418038282565150043887111557447728662619724653540418129238675057954352070086411310709146068774918156250942372450602508701209463397051260145559905011627340800682907730374147590128560815213916800137855627405184762425129137826298266544697430889004252551549538727209882904482361344694566538835920302983321057436616803038237438819053674987221623475689744319764580785510842421270116490587125924962264286632035692497323213156663970850149434089127086522602842196045086954307286329807891224491942228810727441029056404807521638700084593630621995874043050469678376094711128446756799853343384551959505097156756592488536261807135488206310670553716793132666495053467314786339903857747801703487468887727266656368233301554998592933933110792019367693278655271311863085578849115457463093331816867135917700903185442915099481165379754984402076543447827261343048371031667039086475890181690139853644507028126147306676388461945984937350427243032005634492835577659088220741307687293361081235428963829193244361000446970020341053971329531586335415386433920249139213149143425945080645017817076951863512696607851092624277557783383650911126449290796404367482802371245499548978086865972727277589415247920095777872216528401164855802036381510218325350083309733901217001284693536848054934519168418500724202603327257178566555167141692298134773707491018157997798914190896370589669898365157348828500474601412411749213294428625183509023367813576288106869602381363931961394864131574418296107804637088275630608814596123390902265285624054581472496083108272766074492948073435088602046144283897517123206971151768456102609841499622311843248835272418616434974039103708896211493177015346965027893830462717241668053689156567834988861815388764028995405810316370284476260130454613770907359438877756348660732511013902007693617004819914826621502815040616705733993618952983128946777072036711106490442328046847220972963722081140301203688721089808520171897221496400863278124908312053216568773444445034861724987378849724366363597662352898034268343551230551244011301941381290096805073925976690128894689676939958714006170795098728032273568191927323652439986813465830601299275976241856863729743526858626462729573472904313159148215100527632363626358786305899606184586048864440889232725959309802265552709132094613570394375180173633711560339697180302510202206752319267258646781309062695701554532318132836129541794958461010218967909559015138731618204765431442665647996914962615835710330168……

 

「……あれ?」

 

表示が、終わらないのだ。数字の羅列はとうにステータスウィンドウを突き抜け、部屋の壁までも突き抜け、どこまでまっても終わる様子がない。

 

「……故障か?」

 

「変ですね…… 故障していたら水晶玉が赤色に光るので故障ではないと思うんですが……」

 

 困惑しながら俺が尋ねるが、どうやらギルド職員も困惑しているようである。

 

「……まあいい。ギルドにステータスを登録する義務はないのだろう?この魔法を注視してくれるとありがたいのだが。」

 

「それが、できないんですよ……」

 

「……え?」

 

 ギルド職員が話を続ける。

 

「『情報公開』の魔法については知ってたのに、魔法則第三原理についてはご存じないみたいですね。一度発動した魔法っていうのは、効果が発動し終えるまで決して止まることはないんですよ。それにモルキアの魔法発動論によると……」

 

 もはや職員の話は頭に入ってこなかった。このステータスウィンドウを出したまましばらくの間生活し続けないといけないのか?本当に?

 

 だが、この時の自分はまだ事の重大さを理解していなかったのだ。精々二日くらいでステータスウィンドウを閉じれるだろうと、そう楽観視していた——

 

 

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 70年後。

 

 異世界での暮らしは、非常に味気ないものに終わった。世界の支配を目論んでいた魔王は俺の異常なステータスウィンドウを見ただけで戦意喪失して全面降伏してしまったし、美少女たちは気味悪がって誰も近寄ってこなかった。

 

 実は体力が多いだけで他は大して強くないということがバレてしまってからは、天文台の一室に閉じ込められている。ステータスウィンドウを右側に突き抜けていった数字が、左側からやってくる。これももう見慣れた、でも忌々しい光景だ。これのせいで俺は軟禁されているといっても過言ではないのだから。

 

 なんでも俺のステータスが返ってくる周期を利用して、完璧な暦を決めたらしい。世界が平面だと思われていたのも、俺のステータスウィンドウのおかげで球体ではないかという説が浮上してきてるんだとさ。

 

 船乗りたちは俺のステータスを目印に航路を辿るらしいし、遥か東方の国では俺のステータスウィンドウが輪廻の象徴として神格化されているとも聞いた。そうですか。

 

 俺のステータスがオープニングしているおかげで、この異世界の科学の発展に寄与しているのかもな。そう思うと少しだけ、温かい気持ちになる。いや、そう思わないと、やってられないのだ。

 

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・あとがき

 今回の話は「今までで一番なろう小説らしく」をコンセプトに作った。一人称視点がかなり難しくて、所々三人称視点と混じってしまっているような気がする。文章力不足って感じ。あと女神様を出して女キャラクターを書いてみたかったのだが、本当に難しかった。こんなのでなろう小説書いていけるのかな……

 書いてから思い出したのだが、グラハム数周りの話はかなり『グラハム数レ○プ!全次元一の大富豪と化した先輩(https://www.nicovideo.jp/watch/sm24243939』に影響を受けている。若干パクリっぽくなってしまったが許してほしい。

 ちなみにステータスのところで具体的な数字を出していますが全部想像です。本当のグラハム数の中にこのような並びの数列が含まれているかは知りません。