やり貝日記

多分ゲームのこととかを書きます。

The Lord of the Rings: Gollum プレイ感想

  • まえがき

The Lord of the Rings: Gollum を皆さんはご存知だろうか?ホグワーツレガシー然りコング然り、今年は原作ありの大作ファンタジー(?)のゲーム化が多かったが、これもその一つである。

指輪物語』と『ホビット』に出てくるゴラムというキャラクターを主人公とし、原作ではほとんど描かれていなかった場面、つまり、『ホビット』で彼が霜ふり山脈でビルボさんに指輪を奪われてから、『指輪物語』で当代の指輪所持者であるフロドさん一行がモリアにて彼に尾行されていることに気付くまでの間を描くという意欲作なのだ。

当然面白い……かと言われるとそんなこともなく、残念ながら世間では早々にクソゲーの烙印を押されてしまい、アフィブロガーのおもちゃとして悲惨な最期を遂げてしまった。そして更に残念なことに自分でプレイしてみても、面白半分で貼られたレッテルが言うほど間違いではないことに気付いてしまうだろう。

いきなりローカライズが切れたり付いたりするだけならまだマシな方。次々と現れるゴミカスみたいなバグが、プレイヤーの心を離して掴まない。日本語版唯一(?)の攻略ブログも進行不能バグを引いて攻略を断念しており、途中からは否が応でもこのゲームに真剣に向き合わないとクリアできなくなる。ボリュームはそんなにないので進行不能にさえならなければクリア自体はそんなに難しくないというのが個人的な感想だが、結構キツめのゲームであることは疑いの余地がない。

 

ただ、意外と楽しめる点や考えさせられる点のあるゲームでもあったと思う。プレイ感想をわざわざ書くからには読んだ人にはゴラムをプレイしてほしいと思っているわけなので、ちょっとこのあたりを掘り下げてステルスマーケティングをしていきたい。

 

※自分は一応原作小説・映画共に触れたことがあって、この記事を書くために2022年から出ている最新の邦語訳も読み始めたのだが、それでも生粋のトールキンオタクの方々から見ると間違ったことばかり言ってる可能性がある。許して。

 

  • ゴラムは社会派作品である

ツイッターで本当に救われるべき存在は救いたくなるような見た目をしていないという話が流れてきたことを、自分はこのゲームをプレイしながら思い出していた。

プレイヤーキャラとして操作するキャラクターには普通愛着が湧くものだと思う。できれば救ってやりたい、本懐を遂げさせたい、幸せになってほしいと感じることだろう。あまりにも悲惨な境遇を背負っている等で同情できるなら尚更だ。

ゴラムさんの境遇は可哀想の一言に尽きる。指輪を巡って親友を殺す羽目になったことから始まり、一族からは邪険にされて追い出され、そこから数百年は蛆虫の如く這いずり回る生活を余儀なくされて精神崩壊寸前になり、唯一のいとしい指輪まで盗まれたかと思うと知らん奴らに指輪どこやったんだよと拷問され、収容され、看守のオークにボロクソに言われ、逃げ出した先で匿ってくれたエルフの村の子供たちにもボロクソに言われ、ガンダルフにすらボロクソに言われ、気に入ったエルフもイケメン有能エルフに寝取られてしまった。

プレイヤーキャラなのに、ここまで可哀想なのに、プレイしていてもゴラムさんには同情の気持ちが全く湧いてこなかった。悪い意味で常にへこたれずに人を騙そうとし続けるメンタルが不安定な気持ち悪い生き物に情けをかけるのは相当難しいのだなあという事実にゴラムを通じて気付くことができる人間は多いことだろう。ゴラムに情けをかけられるようにならないと、魂のステージは前に進まない。

 

  • グラフィックは綺麗

クソゲーを養護する際の常套句みたいになっている「グラフィックはいい」「bgmはいい」だが、これに関して言えば本当にグラフィックは綺麗だと思う。厳密にはグラフィックが綺麗というよりは、シーン作りが上手いといった感じか。黒杭で奴隷共がかの目への忠誠を誓わされるシーンとか、カメラワークなんとかすればそのまま映画に持っていけるくらいのクオリティがあったと思う。

 

  • マジックザギャザリングをやってるとニヤニヤできる可能性がある

mtg指輪物語のコラボパック『指輪物語:中つ国の伝承』が発売された時に気付いたのだが、意外と指輪物語を知ってるmtgオタクは多くないらしい。(オタクはキモいから当然ファンタジーの世界に逃げ込んだ経験があると思ってたんだが……)

この手のコラボものは両方の元ネタを知っていた方が楽しめるのは言うまでもないと思うが、実はmtgプレイヤーが指輪物語へ入門するのにぴったりなのがこのゴラムかもしれないのだ。

原作読破や映画視聴よりおそらくこのゲームのクリアにかかる時間の方が短い上に、《一つの指輪/The One Ring》《オークの弓使い/Orcish Bowmasters》あたりの有名キャラクターはちゃんと登場してくれる。特にオークの弓使いとゴラムさんは因縁浅からぬ仲であり、馬車で爆速しながらオークの弓使い6体と苛烈な戦いを繰り広げるシーンなんかもある。前の二つと比べるとだいぶ格は落ちるが、《ナズグル/Nazgûl》《ウンゴリアントの末裔、シェロブ/Shelob, Child of Ungoliant》《サウロンの口/The Mouth of Sauron》にも会える。トロールはいないがカザド=ドゥームだって出てくる。オリファントとエントとロリアンを見たい人は映画見てくれ。

 

・おわりに(ネタバレ注意)

ゲームのラストで、ゴラムさんはモリアの門を開けることができず失意のうちに去っていく。にわか知識だから間違いかもしれないが、この門は内側からは力で開けられ、外側からは友によって開けられるものだったと思う。ゴラムさんはそのどちらも持ち合わせていないことを象徴するシーンだったのかなあと思うが、最後までゴラ虐に余念がなさすぎないか?