やり貝日記

多分ゲームのこととかを書きます。

VRMMOおっさん11話の雑感

今期絶賛放送中のアニメ「とあるおっさんのVRMMO活動記」の第11話「アース、赤ちゃんドラゴンを拾う」は皆さんもうご覧になっただろうか。毎話のように非常に新鮮な面白さを提供してくれる良作なのだが、今回の話には腑に落ちない点があったように思えるのでちょっと語りたい。

 

まず今回の話を振り返ろう。11話は以下のような内容で進行する。

  • おっさんがレッドドラゴンの子を偶然拾う。
  • おっさんがご自慢の料理スキルでドラゴンの子に餌付け。当然喜ばれる。
  • ドラゴン族は気位が高く閉鎖的で他種族とほとんど関わりがない事が判明。
  • 子供を攫われたと勘違いした親ドラゴンさんが激怒して飛来するがすぐに勘違いだったことに気付き謝罪。ついでにおっさんのドラゴン相手に物怖じしない胆力とか無欲さを褒めて帰宅する。
  • 運営側がおっさんを注視しておっさん興味深いねえと語り合う(11話の本筋には関係ない)
  • おっさんが妖精国の大衆居酒屋でバイトする。(11話の本筋には関係ない)
  • おっさんが哀愁を漂わせながらこれまでの旅路を総括する。(11話の本筋には関係ない)
  • ドラゴンの国からおっさんの元に使者がやってきてドラゴンの子の食欲が落ちていると嘆く。幼少期のドラゴンにとって食事は重要らしく、たくさん食べないと身体が大きくならないらしい。
  • 食欲が落ちているのはおっさんの料理が美味すぎたせいで他のものが食べられなくなったからだと判明。使者がおっさんの料理を持ち帰る。
  • おっさんの料理のおかげでレッドドラゴンの子が食欲を取り戻す。ドラゴン族の方々はこの件で初めて料理の概念を知ったらしく、外の世界(というかおっさん)の技術に関心を寄せる。
  • 使者が改めておっさんに料理を習いに行くシーンで終了。いつも通り本編で全く出番がなく名前すらあやふやな女が歌うエンディングが流れ出す。

 

一言でまとめるとアースさんの料理スキルはドラゴンをも唸らせてしまう程レベルが高いという話だったのだが、ちょっと待ってほしい。いくらなんでも料理の概念が存在しないなんてことありえるのだろうか?

 

(VRMMOおっさんは厳密には異世界ファンタジーものではなくこのカテゴリーに当てはまらないのだが)異世界ファンタジーものの鉄板ネタとして、現実世界では当たり前だが異世界には存在していないような概念を利用する展開が多いのはもう周知の事実である。周防勇人さんはウィキペディアで見た軍略で他の士族を蹴散らし、異世界薬局の主人公(名前忘れた)は東大薬学部で過労死するまで研究して得た知識で結核を治療していた。この程度のことは多くの異世界で一般的に行われていることであり今更目くじら立てるようなことでも無いのかもしれないが、流石に料理自体が存在しないなんて展開はちょっと無理がありすぎる。

中南米の文明では車輪の概念が無かったんだぜみたいなレベルの話で済む問題ではない。料理って要は衣食住の食に相当していて、服を着たら冬の寒さが凌げることに気付いたぜ!っていうのと同レベルの話のはずなのだ。ドラゴン族が未発達の文明しか保持していないとかならまだしも、こいつらは平然と人語を介し、人間に変化できる個体も存在し、立派な石造りの城に住んでいる描写もある。しかもドラゴン族にとって食事は重要だという情報も同話で開示されている。いくら閉鎖的な種族とはいえ、これで料理だけ知らないわけないだろ。人間に化けられる奴らは今まで何を見てきたんだよ。

 

 

……ここまでボロクソに言ってしまったが、実は真面目に伏線なんじゃないかとちょっと期待している。

まず第一に、おっさんを持ち上げたいのなら料理ネタで持ち上げる必要が存在していない。おっさんは多芸多才なので、もっと自然な持ち上げ方がいくらでもあったはずである。彼はここまでの話で料理以外にも木工スキルを使った装備作成や薬剤スキルを使ったポーション作成を幾度となく披露してきた。その中だと例えば薬剤スキルはかなり話を動かすのに適しているはずで、ドラゴンの子を料理スキルで餌付けして懐かせて……という11話で行われた一連の流れは、薬剤でも代替可能なのではないだろうか。ドラゴン族は惰弱なものを嫌うので今まで薬に頼る発想が無かったみたいな理由もでっちあげやすいだろうし、こっちの方が料理を知らないという意味不明な展開よりはまだ筋が通っている。どうもわざわざ料理の概念というより一般的なものを知らないという展開にした理由がありそうだ。

第二に、同じ話でおっさんが妖精国の大衆居酒屋でバイトする展開が唐突に挟まったのも相当怪しい。一見して前後の展開と関係ない尺稼ぎにしか見えないが、こう考えてしまうのはおそらく製作サイドの策略に見事に引っかかってしまっている。そう、このシーンは妖精国にはちゃんと料理の概念が存在していて一般層まで普及していますよということを示す伏線だと考えた方が綺麗に話の流れに繋がるのである。

 

運営がプレイヤーを使ってワンモアフリーライフオンライン上で何らかの実験をしていることは前々から明らかになっているので、おそらくドラゴン族が料理の概念を知らないのも何かしらの壮大な実験の一環になっているのだろう。基礎的な概念を知らないような種族を設定したらプレイヤーはどんな反応するだろうなあみたいな全能者じみた発想でドラゴン族の方々のドラゴン生を弄んできた可能性が高い。ワンモアフリーライフオンラインの世界はまだまだ広がるっぽいので、そのうち服の存在を知らずに凍死する馬鹿みたいな種族が出てくると考えられる。

最終回まであと2話くらいだが、きっとここから運営が全ての黒幕であることが判明しおっさんがリアル会社に乗り込んで全員ボコボコにするスカッと展開があるはずだ。このアニメが終わるまではまだまだ死ねない。